2009年02月13日
コーキングのコツ_その2「道具編」
コーキングの仕事は、意外と難しい。
マヨネーズや生クリームを思い浮かべてもらうといい。…あれを、思った形に充填・整形するのがお仕事。
やつらは、一度触ったら、離すときに必ずくっついてくるし、痕跡がどうしても残ってしまう。
とはいえ、建築現場において、コーキングは実に優れもので、防水工事には欠かせない。最近は壁紙の端の処理など、いろいろな場所に必要とされていて、腕のいい職人は、こんな不況でも引っ張りだこだ。
DIYなど、小面積なら指で馴らすのが手っ取り早い。人間の手は、万能の工具だ。
ただし、業務で量(距離)をこなすとなると、話は別。均一に仕上げるためには、道具を効率良く使いこなす知恵と工夫が必要となる。
優れた道具は、まさに手の延長。それと、段取りや工夫も大事だね。
なので、「その2」は道具編。
●コーキングのコツ_その1「ならしバッカーの作成」
→ ●コーキングのコツ_その2「道具編」
●コーキングのコツ_その3「施工編」
前述の「ならしバッカー」は、金属ヘラに比べると圧倒的に効率がいい。仕上がりもキレイだし、材料も節約できる(後述)。
でも、コーキングの仕事には、他にも重要な工具がいくつもある。
まずはそれらの解説から。
■コーキング・ガン
ある程度以上の作業スピードを求めると、ガンは片手で扱う。
材料を絞り出した後、ガンをそばに置いて、すぐにヘラでならすんだ。
なので、ガンがロックしたり、レバーが戻らないのは言語道断!
両手がふさがっている状態で、ガンがロックしたら、両手を空けてガンをなおすしかない。その間に、コーキング剤が固まって、仕上がりが悪くなってしまう。もしくは、よけいな所にコーキングを付けてしまう…。
で、現在、僕が使っているのは、左の168円のガン。
ホームセンターには、MONO心をくすぐるような、色遣いのかっこいい高価なガンがいろいろ売っている。でも、いくつか試してみたけど、見た目と機能は必ずしも一致しない。
⇒ コーキングガンの例
納得の一台を見つけるためには、お店の人には悪いけど、レバーを握ってみて、心棒に傷が付かないか確かめるのがいいかも知れない。
心棒が弱い材質だと、すぐに傷だらけになって、そこでレバーが引っかかってしまう。
▲上、心棒が傷だらけ。下、傷無し。
僕の168円のガンは、たまたま当たりのメーカー。半年以上使って、心棒には傷一つ無い。
ただ、心棒が堅い分、引っかかりが弱いのか、送り出し側が少し甘い。
そんなときは、映画T2の後半、サラ・コナーがショットガンを打つ時のように、ガンを下に向けて肩で振りおろしながらレバーを握ると、スムーズに使える。
■コーキングのノズル
一般的なシリコン・コーキング剤を買ってくると、一本毎にプラスチックのノズルが付いてくる。
材質はポリプロピレンで、ローソクの蝋に近い性質。接着性が悪いので、くっついたコーキング剤が固まっても、簡単に取り除ける利点がある。

▲バーナーで炙って、透明になったら曲げる。
通常はそのまま、好みの太さの位置で切って使うんだけど、ちょっと加工すると隙間や狭い所でも使いやすくなる。僕の現在の現場は、隙間の施工が多いので、いろいろなバージョンを試してみた。
加工は火で炙って曲げる。ライターでもいいけど、バーナーの方が精度がいい。
写真のように、火を当てて透き通ってきたら、一気に曲げてそのまま保持する。
ちなみに、最初から曲がったノズルも、お店によっては取り寄せる事ができる。一個30円~(沖縄、浦添市の丸宮商会)くらいから。
⇒ コーキング用曲がりノズルの例
▲上側が市販の曲がりノズル
■コーキングの材質
コーキングの種類はけっこうある。ホームセンターで良く見かけるのが、一液性のシリコンコーキング。これは耐候性も10年程度と長く、固まった後は熱に強いし、一般的な用途なら万能だ。
ただ、塗装できないのと、汚れやすい(ブリード汚染)欠点がある。
施工可能な時間は、沖縄の夏の屋外では10秒、冬でも1分が限界。それを過ぎると、表面から固まり始めて、ヘラでならすとブツブツになってしまう。
(沖縄の夏の暑さは想像以上に厳しい。…そんな中で修行したので、僕は結構鍛えられている)
少し高価だけど、変性シリコンというタイプは、一応、上から塗装ができる。
また、業務用で良く使われるのが2液タイプのポリサル系のコーキング。汚れが付きにくくて安く、施工可能時間も長いのが特徴だ。(耐候性は沖縄では5年~程度。専用の攪拌機が必要)
■ヘラ
ヘラは手の延長になる道具。
一般的なのは金属のヘラ。「コーキング ヘラ」等で検索すると、プロっぽいのがいろいろ出てくる。
でもね、実際に使ってみると、市販品は「それなり」の使い勝手。
いろいろ自分の好みに加工することで、より手に馴染む道具に変わっていく。
例えば、写真は僕の直角用ヘラ。
入り隅の部分でキレイに仕上げる事ができて、平らなヘラの機能も合わせ持っている。
▲直角の部分に斜めに当たる、微妙な角度。
短いのは、狭いところで小回りがきくようにちょん切ってしまったから
いつも、これと自作の「ならしバッカー」を常に左手に保持して、必要時に右手に持ち替えて作業している。(最近は左手でも作業してるけど…)
ご参考まで。
■ならしバッカー
前回解説した、ゴム系のヘラ。
これを使いこなすと、仕上がりに歴然の差が出るし、コーキングの材料も節約できる。
▲左、ならしパッカー ▲右、金属ヘラ
ゴムの「ならしパッカー」はコーキングを掻き取って行くのに対して、金属ヘラは左右に掻き分けていく。
前者は、掻き取ったコーキングを再利用しやすいけど、後者は空気に触れる面積が大きく、すぐに硬化が始まってしまう(一液タイプの場合)。
また、金属ヘラの場合は、どうしてもマスキングの範囲からはみ出しやすく、素材を汚してしまう事が多い。はみ出たコーキングを再利用しようとしても、集めるのに別な形のヘラが必要…。と、いろいろ効率が悪い。
それだけではない。仕上がりも全然違う。
▲左、ならしパッカー ▲右、金属ヘラ
「ならしパッカー」はつるんとした仕上がりなのに比べ、金属ヘラは施工対象(この場合は石材)表面の凹凸を拾ってビビリ模様が付いてしまう。斜めから見ると歴然だ。
…ところで、一秒を争う施工の現場で、写真を撮るのは結構たいへん。でも、記録してみるとおもしろいな。
●コーキングのコツ_その1「ならしバッカーの作成」
→ ●コーキングのコツ_その2「道具編」
●コーキングのコツ_その3「施工編」
マヨネーズや生クリームを思い浮かべてもらうといい。…あれを、思った形に充填・整形するのがお仕事。
やつらは、一度触ったら、離すときに必ずくっついてくるし、痕跡がどうしても残ってしまう。
とはいえ、建築現場において、コーキングは実に優れもので、防水工事には欠かせない。最近は壁紙の端の処理など、いろいろな場所に必要とされていて、腕のいい職人は、こんな不況でも引っ張りだこだ。
DIYなど、小面積なら指で馴らすのが手っ取り早い。人間の手は、万能の工具だ。
ただし、業務で量(距離)をこなすとなると、話は別。均一に仕上げるためには、道具を効率良く使いこなす知恵と工夫が必要となる。
優れた道具は、まさに手の延長。それと、段取りや工夫も大事だね。
なので、「その2」は道具編。
●コーキングのコツ_その1「ならしバッカーの作成」
→ ●コーキングのコツ_その2「道具編」
●コーキングのコツ_その3「施工編」
前述の「ならしバッカー」は、金属ヘラに比べると圧倒的に効率がいい。仕上がりもキレイだし、材料も節約できる(後述)。
でも、コーキングの仕事には、他にも重要な工具がいくつもある。
まずはそれらの解説から。
■コーキング・ガン
ある程度以上の作業スピードを求めると、ガンは片手で扱う。
材料を絞り出した後、ガンをそばに置いて、すぐにヘラでならすんだ。
なので、ガンがロックしたり、レバーが戻らないのは言語道断!
両手がふさがっている状態で、ガンがロックしたら、両手を空けてガンをなおすしかない。その間に、コーキング剤が固まって、仕上がりが悪くなってしまう。もしくは、よけいな所にコーキングを付けてしまう…。
ホームセンターには、MONO心をくすぐるような、色遣いのかっこいい高価なガンがいろいろ売っている。でも、いくつか試してみたけど、見た目と機能は必ずしも一致しない。
⇒ コーキングガンの例

心棒が弱い材質だと、すぐに傷だらけになって、そこでレバーが引っかかってしまう。
▲上、心棒が傷だらけ。下、傷無し。
僕の168円のガンは、たまたま当たりのメーカー。半年以上使って、心棒には傷一つ無い。
ただ、心棒が堅い分、引っかかりが弱いのか、送り出し側が少し甘い。
そんなときは、映画T2の後半、サラ・コナーがショットガンを打つ時のように、ガンを下に向けて肩で振りおろしながらレバーを握ると、スムーズに使える。
■コーキングのノズル
一般的なシリコン・コーキング剤を買ってくると、一本毎にプラスチックのノズルが付いてくる。
材質はポリプロピレンで、ローソクの蝋に近い性質。接着性が悪いので、くっついたコーキング剤が固まっても、簡単に取り除ける利点がある。



▲バーナーで炙って、透明になったら曲げる。
通常はそのまま、好みの太さの位置で切って使うんだけど、ちょっと加工すると隙間や狭い所でも使いやすくなる。僕の現在の現場は、隙間の施工が多いので、いろいろなバージョンを試してみた。
加工は火で炙って曲げる。ライターでもいいけど、バーナーの方が精度がいい。
写真のように、火を当てて透き通ってきたら、一気に曲げてそのまま保持する。

⇒ コーキング用曲がりノズルの例
▲上側が市販の曲がりノズル
■コーキングの材質
コーキングの種類はけっこうある。ホームセンターで良く見かけるのが、一液性のシリコンコーキング。これは耐候性も10年程度と長く、固まった後は熱に強いし、一般的な用途なら万能だ。
ただ、塗装できないのと、汚れやすい(ブリード汚染)欠点がある。
施工可能な時間は、沖縄の夏の屋外では10秒、冬でも1分が限界。それを過ぎると、表面から固まり始めて、ヘラでならすとブツブツになってしまう。
(沖縄の夏の暑さは想像以上に厳しい。…そんな中で修行したので、僕は結構鍛えられている)
少し高価だけど、変性シリコンというタイプは、一応、上から塗装ができる。
また、業務用で良く使われるのが2液タイプのポリサル系のコーキング。汚れが付きにくくて安く、施工可能時間も長いのが特徴だ。(耐候性は沖縄では5年~程度。専用の攪拌機が必要)
■ヘラ
ヘラは手の延長になる道具。
一般的なのは金属のヘラ。「コーキング ヘラ」等で検索すると、プロっぽいのがいろいろ出てくる。
でもね、実際に使ってみると、市販品は「それなり」の使い勝手。
いろいろ自分の好みに加工することで、より手に馴染む道具に変わっていく。

入り隅の部分でキレイに仕上げる事ができて、平らなヘラの機能も合わせ持っている。
▲直角の部分に斜めに当たる、微妙な角度。
短いのは、狭いところで小回りがきくようにちょん切ってしまったから
いつも、これと自作の「ならしバッカー」を常に左手に保持して、必要時に右手に持ち替えて作業している。(最近は左手でも作業してるけど…)
ご参考まで。
■ならしバッカー
前回解説した、ゴム系のヘラ。
これを使いこなすと、仕上がりに歴然の差が出るし、コーキングの材料も節約できる。


▲左、ならしパッカー ▲右、金属ヘラ
ゴムの「ならしパッカー」はコーキングを掻き取って行くのに対して、金属ヘラは左右に掻き分けていく。
前者は、掻き取ったコーキングを再利用しやすいけど、後者は空気に触れる面積が大きく、すぐに硬化が始まってしまう(一液タイプの場合)。
また、金属ヘラの場合は、どうしてもマスキングの範囲からはみ出しやすく、素材を汚してしまう事が多い。はみ出たコーキングを再利用しようとしても、集めるのに別な形のヘラが必要…。と、いろいろ効率が悪い。
それだけではない。仕上がりも全然違う。


▲左、ならしパッカー ▲右、金属ヘラ
「ならしパッカー」はつるんとした仕上がりなのに比べ、金属ヘラは施工対象(この場合は石材)表面の凹凸を拾ってビビリ模様が付いてしまう。斜めから見ると歴然だ。
…ところで、一秒を争う施工の現場で、写真を撮るのは結構たいへん。でも、記録してみるとおもしろいな。
●コーキングのコツ_その1「ならしバッカーの作成」
→ ●コーキングのコツ_その2「道具編」
●コーキングのコツ_その3「施工編」
Posted by IGU at 23:47│Comments(1)
│工事現場 関連
この記事へのコメント
gj
Posted by gj at 2011年12月08日 20:16
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。