2014年01月01日
ヒートパイプの作り方 【自作方法】


これ、外観は普通の銅パイプながら、高速で熱の輸送を行える特殊な構造で、身近なところではパソコンのCPUを冷やすパーツ等に使われています。
⇒ 写真:コアi5ノートPCのヒートパイプ。
仕組み自体はカンタンで、内部では次のようなサイクルが繰り返されています。
(前提として、片側に熱が加わり、反対側は放熱器が有ります)
1,一方に熱を加えると、中の液体が帰化して熱を奪います。
2,放熱器側に移動した気体は、冷やされて液体に戻ります。
3,液体は内壁のメッシュなどに染みこんで、周囲に広がります。
4,やがて液体は熱源に接して、「1」のサイクルに戻ります。
さて、原理がわかると、自分で作ってみたくなります。
今回は、パワーLEDの冷却用に、すこし工夫してみました。
以下、オリジナルのヒートパイプの作り方です。
材料集め・下処理


▲左:銅パイプは、大判カッターでコロコロすると切れます。 / 右:8mm径の銅パイプと、銅板。
必要な素材は、テレビのアンテナケーブルと、銅パイプ。そしてフロンガス。
今回は他に、一番細い(3mm)真鍮パイプと、銅板、ネジ・銅釘を用意しました。
まずはコロコロ転がしながら、カッターを当て、パイプを必要な長さにカット。
※参考記事:アルミ板の切り方

金属の中では柔らかい部類の銅でも、そのままでは「硬くて脆い」ので、下処理を施します。
家庭用ガスコンロで、赤く発色する程度まで炙って、水に浸けて冷却。
これだけで、例えば1ミリ厚の銅板でも、指で曲げられるくらい柔らかくなります。
(後から表面の変色等は磨いておきます)
ウィックの準備

市販のヒートパイプだと、多孔性の酸化物などを使いますが、手作り品の場合はテレビのアンテナケーブルの「メッシュ」が適材のようです。
⇐写真:アンテナケーブルから、メッシュの配線を取り出します。
中にキズを付けないよう、アンテナケーブルに軽くカッターで切れ目を入れたら、芯線を引っ張ると、スルッと剥けて来ます。
取り出したメッシュは、丸い箸などを差し込んで形状を整えておきます。
ヒートパイプの組み立て


▲左:割り箸を差し込んだウィックを、銅パイプに挿入していきます。 / 右:今回は、銅板にもウィックを取り付け。カッターで返しを付けて抜けなくしてます。
まずは、ウィックを丸棒に巻きつけて差し込み、棒を抜いた後に押し込んで壁面にできるだけ密着させます。
はみ出した不要部分は、ハサミでカット。
今回のヒートパイプ制作の目的は、パワーLEDの放熱用なので、先端にはLEDマウント用の銅板(1mm厚)を取り付けました。
この部分を冷やすのがテーマなので、銅板自体にもウィックを取り付けてます。
パイプを潰してカシメる際、うまく銅板が組み合わさるよう、削って形状を整え、ウィックを付けて差し込んで、バイスで圧着。
各種パーツのロー付け

今回は全て電子工作用の100均ハンダを使用してロー付けしました。
後で書きますが、構造部分と封入部分、それぞれハンダを使い分けても良いかもしれません。(溶ける温度が違う種類が有ります)
ちなみに、ステンレス用のフラックスが有れば、銅とステンレス、真鍮などの異種金属でも簡単にロー付けできます。
コツは、くっつける金属どうしを密着させて、スキマが無い状態を作ること。
そしてハンダではなく、金属部分を火で炙って、高温になった母材にローが触れて溶けるような感じで施工すること。
タイミングが合うと、すっとスキマに流れ込んで、素材同士が一体化します。
今回は、パイプの開口部を塞ぐのに、同径に削りだしたステンレスのネジを使いました。



▲左:ステンの皿ネジの外径を削り、サイズ合せ。 / 中:硬いものに押し付けて、カシメめて固定。 / 右:ロー付け後の状態。
作動液(冷媒)の準備
ちょっと話が脱線します。
昔、僕が若くて貧乏だった20歳頃w、拾ってきた冷蔵庫を(壊れていたので)修理しようとしたことが有ります。
調べてみると冷媒が抜けていました。
で、自動車用のフロンガスを買って来て、無理やり注入。
ところが、ガスが逆流して、部屋中にマシン油とガスが散ってしまいました。
間近にいた僕は、頭から油でベトベトです(笑)。
まぁ、そんな失敗があるので、ガス注入が難しいのは知ってました。
ネットでいろいろ情報収集をすると、やはりみんな、ガス注入で苦労しているようです。(中には、明らかに無理な工法も‥)

写真のように、真鍮(しんちゅう)パイプを別に取り付け、そこから最後にガスを注入。
密閉しやすいよう、一番細いパイプを準備しました。
なお、真鍮は銅よりかなり熱伝導の低い素材です。
冷媒の封入時、熱により本体のロー付け部分を溶かさないよう、あえて別な素材を使った次第。
使用するロー材も、溶解温度の違うものを使った方が安心です。 (鉛フリーハンダが226℃~、低温タイプは180℃~)

断っておきますが、これは可燃性ガスです。
危険! ですよぉ~。
(ガスガン用エアHFC134aが不燃性)
⇐ 写真:100均で買った注射針をテープと輪ゴムで縛り付けてます。
注:今回の実験は、可燃ガスと火を使用します。溶かした金属を扱う工程もありますので、スキルのない人は絶対に真似しないで下さいね。
作動液を封入(難関!)

▲ガス注入直後。 ガスが気化して熱を奪われ、霜で真っ白になってます。

0.1gまで測れるキッチンハカリで、1gほどガスを入れたら、すかさず金属でフタをしてロー付けで入り口を塞ぎます。 (少し漏れるので、実質0.5cc以下かな)
この工程は、7回ほど失敗しましたorz。

他にも、パイプをペンチでカシメたりしてみましたが、これもダメ。 ガスを密閉するって、難しすぎ!!
中に加圧状態の可燃ガスが入っているので、マイクロ単位の隙間があっても、ガスが噴出してロー付けの火に着火してピーピーと小さな炎が吹き出します。
火が付かなくても、溶けたハンダがガスでブクブクと泡を吹いたり、酷い時は、詰め込んだネジが、ガス圧で吹っ飛んで行きました(怖)。
最終的に行き着いたのが、銅釘。(#14×32)
わずかに2ミリより太い直径です。


▲左:ロー付けの際は、熱が伝わらないよう、氷水に本体を漬けてます。 / 右:ロー付けの状態。
銅釘を焼き鈍してテーパーに削り出し、ガス注入後にペンチでキリキリとネジ込むと、今度は成功の予感。
シューシューというガス漏れの気配が無く、試しに耳の穴にパイプを近づけても、まったく音が聞こえません。
すかさずロー付け。
ハンダは素直に、すっと馴染みました。
完成です。
ヒートパイプの簡易実験

片方を手で持って、先端を熱湯に突っ込んでみます。
すぐに熱が伝わってきたら、成功。
今回の自作ヒートパイプでは、5~10秒で熱くて耐えられなくなりました。
最初に、先端部をロー付けしている時には、作業が終わっても反対側を手で持っていられたのに比べると、全然違いますね。
早く客観的なデータを取ってみたい所です。
というわけで、朝から一日を使ってヒートパイプの実験をしてみました。
こんな、工作メインの本ブログですが、本年度も、お付き合い、よろしくお願いいたします。
2014元旦 作る人。

この記事へのコメント
ブログを拝見させていただきました、
真空管アンプを自作してます、数々のアイデア素晴らしいです
時間が過ぎるのを忘れました。ありがとう
HPありますグーグルで 蓮田新空間で観れます
真空管アンプを自作してます、数々のアイデア素晴らしいです
時間が過ぎるのを忘れました。ありがとう
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Posted by Shinkuukann久保田 at 2016年08月22日 10:10
ありがとうございます!
Posted by IGU
at 2016年09月02日 20:23

作動液を封入(難関!)の件ですが、思いつきで悪いのですが、
おもちゃのガスガンの部品を使うと良いのではないでしょうか?
アマゾンで「ガスガン用エアHFC134a」はあるし、
インジェクションバルブも売ってます。
パイプの口径をインジェクションバルブの口径に合わせて、
パイプの内側にネジを切り、バルブの取り付けを行えば、
フロンを液体状態で注入出来てバルブを棒で押せば、
最適動作の量までガスを調整出来ると思います。
あくまでも、思いつきです。出来るかは不明です。
材料検索はアマゾンのサイトで「ガス バルブ」で検索してみて下さい。
おもちゃのガスガンの部品を使うと良いのではないでしょうか?
アマゾンで「ガスガン用エアHFC134a」はあるし、
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パイプの口径をインジェクションバルブの口径に合わせて、
パイプの内側にネジを切り、バルブの取り付けを行えば、
フロンを液体状態で注入出来てバルブを棒で押せば、
最適動作の量までガスを調整出来ると思います。
あくまでも、思いつきです。出来るかは不明です。
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Posted by 機械猫 at 2018年09月10日 13:48
楽しそうなので、是非ご自身でやられてみてください。
Posted by IGU at 2018年09月10日 18:08
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