「レジン」の代用に! 不飽和ポリエステル樹脂の まとめ。

IGU

2011年02月20日 21:46


▲量産したパーツの例。 → 注型(流し込み)での、簡易プラスチックパーツ作り!

オリジナルの、同じ形状の部品を、いくつか欲しい時、プラスチックを流しこんでパーツを作る手法があります。

「注型」という製法で、「メス型」さえあれば、同じ部品をいくらでも作れる便利な方法です。

今回は、この手法に使う、プラスチックのお話。
僕が工作によく利用する素材を紹介します。

個人的なノウハウですが、こういったワザを知っておくと、いろいろと工作の幅が広がると思うので、公開しておきますね。


注型で使われる「レジン」と、その代用品


通常、型を使って同じ部品を作る「注型」という工作には「レジン」というエポキシ系の素材がよく利用されます。

専用品なので、精度の良い、高透明なパーツを作ることができます。


が、この「レジン」。

なかなか高価なので、ちょっとした工作に使うのは勿体無い感じです。

左は、自動車のボジションランプをLEDで作った写真ですが、新品レジンの封を開けるのに、勇気がいったなぁ(笑)。
→ LEDポジションランプ


その点、FRP用の樹脂は、安くて手に入りやすいので、気軽に使えます。

これは不飽和ポリエステル樹脂と呼ばれ、ホームセンターで安く簡単に入手できます。
本来は積層用ですが、注型にも転用可能です。

今回はこの、不飽和ポリエステル樹脂が、いろいろな工作に便利ですよ! という情報。

工作とは失敗する事も多いので、気軽に使える素材ってのは大切だと思います。


不飽和ポリエステル樹脂って何?


これ、バイクのカウルや漁船、サーフボード等を作るときに使う、積層用の樹脂です。
FRPって聞いたことがあると思いますが、アレに使うやつ。

ファイバーラミネートプラスチック Fiber Reinforced Plastics ( FRP ) の文字通り、ガラス繊維を積層し、この不飽和ポリエステル樹脂で固めると、各種製品になるんです。


この樹脂は、大きなホームセンターなら、だいたい取り扱っています。

ポピュラーな漁船用なら、1リットルで千円~程度。
透明(青や赤に着色されている事が多いです)の他、白色タイプも売られています。

漁船等にも使われている通り、耐久性は十分です。(トラックの荷台やキャンピングカー等にも利用されていますね)

ただし、透明タイプはペンキ等で表面を保護してやらないと、紫外線で劣化してしまいます。次第に黄ばんで、強度が低下する場合も‥。

その点、サーフボード用の製品なら、紫外線吸収剤が入っていて劣化しにくい他、透明度も高いので、僕は主にこのタイプを利用しています。


難点は、製品精度の問題。

積層用の用途向けなので、固まるときに「肉やせ」といって、数%の体積が減少します。工作の際は、それを見越して設計する必要があります。

注:専門店なら、FRPの型作り用に、特に寸法安定性を高めた製品も入手可能です。


いろんなパーツが作れちゃう



▲左:型を作って、パーツを量産。 / 右:コンセントの配線部分を固めるのに樹脂を使用。

最近作ったパーツでは、天井用ダウンライトのヒンジ部分。
中途半端なサイズなので、プラスチックから削り出しで作るのも、鉄やアルミで作るのも面倒です。

型を作って量産すれば、簡単でした。

充電器のコンセント部分の制作にも使ってみました。
→ 邪魔な充電器の「めがねコード」を小型化!

その他、電子機器の回路の充填用にも、いいですね。

→ 高演色作業灯の作り方(電球型用インバーター使用 色の道Ⅵ) 

そうそう、硬化剤の量の測り方についても、過去に書いたので、ぜひ参考にして下さい。
→ 硬化剤 …その一滴の重さ



追記:研磨機に、水研ぎ用の水タンクを付ける方法! (1)

石材用研磨機に取り付けるため、オリジナル形状で、ペットボトルのキャップを自作しました。


透明度について



▲左:アクリル板の間に、不飽和ポリエステル樹脂を流し込みます。 / 右:キーボードの手前にかざしたところ。

気になる透明度ですが、サーフボード用や、高透明タイプとして売られている物なら、ほぼ無色透明です。

写真はサーフボード用ですが、3ミリの厚さ程度では、アクリルとほぼ同等な感じです。
(2011 3/3追記:サーフボード用でも、青に着色されている製品がありました。ごめんなさい!)

僕が良く使うショップはFRP-Zoneさん。
サーフボード用は、完全な透明です。 もう少し厚みが必要な場合は、内部の濁りというか光の屈折等の点で、高透明タイプの別商品の方が優れていると、お店の人に教えて頂いた覚えがあります。 


FRP樹脂の着色について


僕は仕事がら、様々な着色料を扱いますが、プロ向けの製品でなくても、身近なものでFRP樹脂に着色ができます。

使用するのは、なんと「水性のアクリル絵の具」。 または「油性絵の具」(2011 10/10追記)。
100円ショップの物でOKです。


▲左:樹脂に絵の具を混合。 今回は漁船用の白色樹脂を使用。/ 右:固まった着色樹脂。

混合率は10%以下。
あまり絵の具が多いと、硬化が遅くなる他、樹脂の粘度が増して流れにくくなります。(なお、時間はかかっても、完全硬化後はカチカチに固まります。油性絵の具は、表面にベタつきが出ますが、シンナー等で拭き取るとキレイになります。)


色あい、彩度については、プロ用の着色料には及ばないかな‥。
完全には混ざらず、色の粒子が散らばる感じ。 それでも、全体としては着色できた感じに仕上がります。

なので、重要な箇所には、他の方法で着色して下さい。
(油性絵の具は、かなりキレイに混ざります。 2011 10/10追記)

ていうか、普通は上からペイントするでしょうし、強度的にも、そっちがお勧めです。


▲業務用の着色料を使ったチップ。
 → 色の道 暴露試験(ばくろしけん)


樹脂の発熱について (後日追記)


上記で説明している一般的なFRP用樹脂だと、硬化が早いぶん、熱が内部に溜ります。

そのため、注型に利用した場合、厚みが5~7ミリを超える形状だと、硬化時に高熱を発して変色したり、煙が出たり、入れ物を溶かす恐れがあります。 

なるべく硬化時間の遅いタイプの方が、注型時は安心です。
 ⇒ FRP用樹脂の硬化時間(実験編)

ちなみに、カインズホームセンター(最近、沖縄にも出来ました)には、注型用の透明ポリエステル樹脂が売られています。
試してみると、硬化に1日以上かかりますが、ある程度の厚みが有っても、熱的に大丈夫なようです。

個人的には、硬化が遅すぎるので、他の樹脂と混ぜて、時間や温度を調整して使ってます。
厚みの有るものが作れると、工作の幅が広がりますね。



というわけで、今回はちょっとした個人的ノウハウの公開でした。

次は、この不飽和ポリエステル樹脂を使った、プラスチックパーツ制作のお話を書く予定です。
 ⇒ 注型(流し込み)での、簡易プラスチックパーツ作り!

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